学校案内
式 辞
春の訪れを感じさせる穏やかな日差しの中、校庭の木々の芽吹きにも新たな季節の始まりを感じる今日この良き日に、PTA会長 冨永様 学校評議員の田野上様、江藤様、同窓会事務局 小野様をはじめ多くの保護者の皆さまのご臨席を賜り、大分県立情報科学高等学校第36回卒業式がこのように盛大に挙行されますことを、心よりお慶び申し上げます。
ただいま卒業証書を授与いたしました卒業生の皆さん、ご卒業、誠におめでとうございます。一人ひとり卒業証書を渡す中で、君たちとの3年間の思い出が溢れてきて思わず、一人一人に声をかけてしまいました。君たちは、生まれ変わった情報科学高校の1期生としてその重責をしっかり果たしてくれました。本当に心から感謝しています。また、今日まで深い愛情と忍耐をもって皆さんを支えてこられた保護者の皆さまに、心から敬意とお祝いを申し上げます。
皆さんは今、高校生活という大きな節目を終え、人生の新たな一歩を踏み出そうとしています。
この3年間、あるいはそれ以上の時間を過ごしたこの学び舎での日々を、今どのような思いで振り返っているでしょうか。
本校は、他校と違い、日本全国が注目する「JYOKA STYLE」という学びを構築し、先生方も「未来を生きる生徒のために」という合言葉のもと新たな教育に挑戦し続けてきました。常に「自分で考えること」「自分で挑戦すること」「自分の意見を自分らしく伝えること」を君たちに求め、様々な場面で君たちは、成長した姿を見せてくれました。その姿は、変化の時代を生きる力を、すでに皆さんが身につけていることの証でもあります。
高校生活を振り返ると、楽しい思い出だけでなく、うまくいかなかったこと、後悔していること、心に引っかかっている出来事も、きっと一つや二つはあるはずです。しかし、そのすべてが、今日ここにいる皆さんを形づくってきました。皆さんが高校生活を送ったこの数年間、社会は大きく揺れ動いてきました。感染症の流行により、日常が突然変わる経験をしました。国際情勢の不安定さ、経済の変化、そしてAIをはじめとする急速な技術革新。「将来はこうなる」という見通しが立ちにくい時代を、皆さんは現実として生きてきた世代です。
だからこそ、皆さんの中には「この先、自分はやっていけるのだろうか」「この選択でよかったのだろうか」そんな不安を抱えている人もいるでしょう。今日は、そんな皆さんに、ぜひ伝えたい話があります。
それは、「今、意味が分からない時間が、人生には必ずある」ということです。人は、結果が出たときや、成功したときには、その道のりを簡単に語ることができます。けれど、人生のほとんどの時間は、答えのない中で迷いながら進む時間です。
努力しても結果が出ない。
頑張っているのに評価されない。
自分だけが取り残されているように感じる。
そんな時間は、誰の人生にも必ず訪れます。高校生活の中でも、そうした経験をした人がいるはずです。
部活動でレギュラーになれなかった人。
志望した進路に届かなかった人。
友人関係に悩み、自分を責め続けた人。
そのとき、皆さんはこう思ったかもしれません。「この時間に意味はあるのだろうか」と。しかし、ここで一つ覚えておいてほしいことがあります。人生の意味は、その最中には分からないことの方が多いということです。後になって振り返ったとき、「あの遠回りがあったからこそ、今の自分がいる」そう思える日が、必ずやってきます。
失敗した経験は、人の痛みを理解する力になります。
報われなかった努力は、簡単に諦めない心を育てます。
孤独を感じた時間は、他者を大切にする優しさへと変わっていきます。
今はまだ、その意味が見えなくても構いません。意味が分からないままでも、前に進んでいいのです。
これからの社会では、「正解を知っている人」よりも、「問い続けられる人」が求められます。AIは、正しい答えを速く出すことができます。けれど、何が大切か、何を選ぶべきか、その問いを立てるのは、人間にしかできません。皆さんには、ぜひ自分自身に問い続けてほしいと思います。「自分は何を大切にしたいのか」「どんな人でありたいのか」その答えは、すぐに出なくても構いません。変わっていっても構いません。問い続けること自体が、皆さんを成長させていきます。そして、もう一つ大切なことがあります。
それは、「自分の人生を、他人と比べすぎない」ということです。現代社会では、他人の成功が簡単に目に入ってきます。
誰かの合格、誰かの活躍、誰かの充実した生活。それを見るたびに、自分だけが遅れているように感じてしまうこともあるでしょう。
しかし、人生は競争ではありません。早く進むことよりも、自分の足で歩いているかどうかが大切です。
立ち止まってもいい。遠回りしてもいい。やり直してもいい。皆さんには、何度でもやり直す力があります。
それが、若さであり、可能性なのです。そして、情報科学で培った「JYOKA PRIDE」なのです。
この学校で皆さんが得たものは、成績表に書かれていることだけではありません。
仲間と笑い合った時間。衝突し、悩み、乗り越えた経験。先生方からかけられた、厳しくも温かい言葉。
それらすべてが、これから先、皆さんが迷ったとき、立ち止まったとき、「それでも前に進もう」と思わせてくれる力になります。
卒業生の皆さん。どうか、自分の人生を大切にしてください。簡単に諦めず、自分を粗末に扱わず、自分の可能性を信じ続けてください。そして、自分を愛し続けてください。皆さんは、すでに変化の時代を生き抜いてきました。だからこそ、これからの社会でも、必ずやっていけます。
結びに、卒業生の皆さん一人ひとりが、迷いながらも、自分なりの答えを見つけ、それぞれの場所で、静かに、しかし確かに光る存在となることを心より願い、式辞といたします。本日は、誠におめでとうございます。
令和8年3月1日
大分県立情報科学高等学校
校長 橋本 武晴