令和5年度 卒業式 校長式辞

式辞

今年は、年始から「能登半島地震」の発生や航空機事故、大規模火災等多くの方々が被害に遭われました。心からお見舞い申し上げます。

そんな中ではありますが、PTA会長 冨永 希一様、学校評議員の上橋 一夫様、堺井 常行 様をはじめ多くの保護者の皆様のご臨席を賜り、大分県立情報科学高等学校、第34回卒業式が、挙行できますことは、卒業生はもとより本校にとりましてもまことに光栄であり、心から感謝申し上げます。

 ただいま、卒業証書を授与いたしました卒業生の皆さん、卒業おめでとう。「情科プライド」を合言葉に本当に色々なことに挑戦してくれた3年間でした。3年前、君たちの入学と同時に私もこの学校に赴任してきました。そして、最初の職員会議の時に職員に向かって、「目まぐるしく変化する昨今において、既存の工業教育、商業教育を捨てて新たな情報科学の教育を作る。それしか、情報科学高校が生き残る道はない。」そう言い放ちました。私自身、大きな勝負でした。先生たちも「情科プライド」を合言葉に、新たな情報科学の教育の創造に挑戦してくれました。その、ニュー情科の1期生として、先生方と一緒になって挑戦してくれたのが君たちです。現在は、新しい学科もでき注目を浴びていますが、新生情科の1期生は君たちなのです。その事実を誇りに思ってほしい。特に今年は、「一歩先行く 情報科学」をキャッチフレーズに掲げ、本校の学びを確立させました。その学びのスタイル「情科スタイル」は、他校と違い、「①生徒が主体的に取り組む。②複数の学科が、学科の枠にとらわれず融合する。③様々な企業や団体と連携し、常に最先端の学びを提供する。」というスタイルです。思い起こしてみてください。君たち自身で企画・交渉・運営した「未来博覧会」。韓国のソウル工業高校と共同研究した課題研究。色々なスポーツを盛り上げるための研究。バーチャル情報科学を研究作成したこと。小さな子供が、安心して遊べる玩具づくり。そんな学びを実践している学校は、他にないと私は自負しています。その結果が、文部科学大臣優秀教職員組織表彰の受彰につながったのだと思っています。

君たちの活躍は、学びだけではなく、学校行事においても目を見張るものがありました。体育大会での勝敗を越えたフェアプレー。I校祭での、全校生徒の心を一つにした見事なパフォーマンス。君たちの団結力と若い力に感動し、年甲斐もなく涙があふれてきました。本当に素晴らしい学年でした。また進路を決めるときには、学年主任、担任をはじめ多くの先生方と遅くまで残って、履歴書作成や、受験対策の勉強、面接練習と頑張っている姿に君たちの成長を見ることができました。

その他にも、部活動、ボランティア活動など色々なことに常に中心となり積極的に頑張ってくれ、本当に感心させられました。

さて、みなさんが、これから生きていく社会はどんな風になっていくのでしょう。戦後、我が国は、廃墟の中から欧米諸国に追い付き追い越すべく、努力してきました。その結果、驚異的な経済成長を遂げ、世界経済の中で大きな地位を占めるとともに、所得水準の面でも世界トップレベルに達し、国民一人ひとりが豊かさを謳歌するにようになりました。しかし、その一方で様々な問題も生じてきています。過疎化、都市化が進行し、企業中心の行動様式が社会に定着する中で、地域社会の連帯感は次第に希薄となってきました。経済成長を追い求め続けてきた結果、いつも何かに追い立てられているような余裕のない生活を送り、また、豊かさを実現したといっても、物質的な豊かさが中心で、溢れるものに取り囲まれながら、何かしら満たされぬ思いが募る毎日を送っているように感じます。このような中で我々は、次第に「ゆとり」や心の豊かさなど多様な価値や自己実現を求めるようになってきているように思います。

今日、我々は、いったん立ち止まり、これまでの過去を振り返りながら、経済成長の過程で失ったものは何か、我々が本当に求めるものは何であるかをしっかり考える必要があると思います。今後、科学技術は、分子レベルでの生命の研究、原子レベルでの物質の研究、宇宙の成り立ちの研究など一層の発展が見込まれます。これまでの我が国のような欧米先進諸国の開発した科学技術を上手に活用するだけの手法はもはや通用せず、自ら科学技術を創造し、開拓していくことが求められてくると思います。情報化の進展についてもさらなる段階に入り、高度情報通信社会の実現は、地球規模で今後の社会や経済の姿を大きく変えていくものと考えられます。また、地球環境問題、エネルギー問題など人類の生存基盤を脅かす問題も生じてきています。これからは、大量生産、大量消費、大量廃棄型の現代文明の在り方そのものが強く問われることになるでしょう。その他にも急速に進む少子高齢化やあらゆる分野においての「男女共同参画社会」づくりも喫緊の課題と思われます。いずれにせよ、変化の激しい、先行き不透明な厳しい社会になると考えられます。

そんな新しい社会に船出をし、これからの大分、日本、世界を担っていくのが君たちです。これからの厳しい時代を生き抜くために私が考える必要な力を三つ君たちに伝えて私の最後の訓示とします。

一、新しいことを生み出す能力

これからの時代、単純作業、肉体労働、危険な作業は、ロボットに任せるようになるでしょう。しかし、ロボットにどんな仕事を任せるのかを決めるのは人間です。今後は、人に与えられた仕事を作業的にこなすのではなく、自ら人間にしかできない新しい仕事を生み出す能力を持ってください。

二、柔軟に考える能力

日本もグローバル化が進んでいます。様々な国から人や文化が日本に入ってくるようになりました。共に学び、共に働く多くの仲間を尊重し、対応できる能力を持ってください。多様性を受け入れる心を持つことによって、柔軟な思考やアイデアが生まれ、可能性が広がって変化を恐れない人になるでしょう。

三、ビジネスと結びつける能力

社会問題をビジネス分野と結びつける能力が求められています。今、世の中でどんな問題が起こっていて、どんなことが求められているのか。一人ひとりが世の中に対して目を向け「こんな世の中にしたい」「だから自分はこのようにして世の中に役に立ちたい」常に目的意識を持って主体的に考える人になってください。以上の三つです。

気づいたと思いますが、まさに、これからの世の中を支える人材育成をする学びのスタイルが「情科スタイル」なのです。そこで学んだ君たちはきっと先行き不透明な社会においても活躍してくれると信じています。

卒業生、心から言う。おめでとう!そして、頑張れ!

最後に保護者の皆様方、本日は、お子様のご卒業本当におめでとうございます。本日に至るまで、本校の教育活動に深いご理解とご協力を賜りまして誠にありがとうございました。大切なお子様をお預かりし、学校としても精一杯取り組んでまいりましたが、行き届かなかった点も多々あったかと存じます。至らなかった点につきましては、この場をお借りしお詫び申し上げます。どうか、今後とも、本校への変わらぬご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

結びに、卒業生の皆さんの今後ますますの成長と、本日ご臨席いただきました皆様方のご多幸とご発展を祈念し、式辞といたします。

                             令和6年3月1日

                              大分県立情報科学高等学校

                               校長 橋本 武晴