学校案内
令和7年10月6日(月)5限に、家庭科の佐藤沙綾教諭が生活デザイン科1年を対象として、「初任者研修」に係る研究授業を実施しました。「初任者研修(通称:初任研)」は採用初年度の1年間に行います。2年目は「ステップアップ研修Ⅰ」、3年目は「ステップアップ研修Ⅱ」、以降は「フォローアップ研修」「中堅教諭等資質向上研修」と、大分県の公立学校は、教員としての見識や指導スキルを高める研修制度が充実しています。初任研では年間5回の研究授業が必須とされ、今回の佐藤教諭の研究授業もその中の1回にあたります。科目は『家庭総合』、題材は「高齢者と関わる」における「人の一生と家族・家庭及び福祉」「高齢者との関わりと福祉」です。初任研の教科指導員を務める有元理恵教諭が見守る中、吉渡正満校長をはじめとして、多数の教職員が佐藤教諭の授業を参観しました。
【本時の目標(めあて)】は「高齢者の疑似体験を通して高齢者の心身の変化に気づき、高校生ができる関わり方を考えることができる」でした。周知の事実として少子高齢化および核家族化は進むばかりであり、対象クラスも祖父母と同居している生徒は4分の1程度ということでした。いずれは高齢者との関わりが増えることが予想されるだけでなく、毎年、本校では介護福祉系への進路を選択する生徒もいることから、高齢者の実際を知ることは大いに意義があると考えます。佐藤教諭は実習や実技ではなく、『家庭総合』という座学の科目でアクティブな授業展開を試みました。授業内容の紹介を兼ねて評価すべき点を以下に記します。
【評価すべき点】
① 「黙想」を起立したままで行い、落ち着いた雰囲気で授業を始めた。
② クラス担任を務める集団でもあり、生徒との信頼関係が見て取れた。
③ 本時のめあてをワークシートに転記させて授業者と生徒で共有した。
④ 導入時に「Slido(スライド)」アプリを使用して質問に回答させた。
⑤ 手袋を装着してのボタン外しやスマホ操作などの疑似体験をさせた。
⑥ スポーツの世界等で活躍する元気な高齢者を具体例として紹介した。
⑦ 自己の考えをMetaMoJiを活用して、グループ内で共有・討議させた。
他にも評価すべき点はありますが、若干の改善点も感じました。研究授業は「普段の授業を見せればよい」という意見もありますが、「(他者に)見せる授業」とすることも大切です。昔から研究授業というと、普段はめったにしない「本時の目標」を板書したり、グループワークをさせたり、ICTを使ったりと、その場しのぎの授業者もいます。佐藤教諭はそれらに恒常的に取り組んでいるので該当しませんが、「見せる場面」については少し気になりました。
上記⑦で「高齢者が買い物でお金を払っているときに戸惑っているのを見かけたとき、あなたはどのような声掛けをするか」をテーマに班活動をさせました。「学習指導案」からも本時のメインの活動のようでしたが、自分の考えの記入、発表、討議にかける時間が少なく、「対話的で深い学び」への到達が懸念されました。教科を問わず授業手法は様々ありますが、私はこの場面においては「ロールプレイング」が有効だと考えました。「高齢者」「レジ店員」「声掛けをする客(自分)」などの役柄をそれぞれ演じてみるワークとして、ある程度の時間をかけて取り組ませることで、「見せる場面」いわゆる「見せ場」にしてはいかがでしょうか。公益社団法人ACジャパンのCM「寛容ラップ」篇で似た内容を扱っているので参考になると思います。私は他校勤務時代に、古典作品の『竹取物語』で「ロールプレイング(演劇)」をやったことがあります。研究授業ではありませんでしたが、生徒は面白がってグループで主体的に取り組んでくれたことを覚えています。佐藤教諭にも「ロールプレイング」へのチャレンジを勧めます。
家庭科の専門科があるのは、県内では本校のみです。そのため、新採用者が配置されることも多く、『家庭科の登竜門』と言っても過言ではありません。佐藤教諭が本校で研鑽を積み、高い教科指導力と専門性を身につけ、大分県の家庭科教育を担う人財となることを期待しています。 文責:指導教諭(古原)





