学校案内
今年も「大分県読書感想文コンクール」に、各学年から2作品を「自由図書」のカテゴリーで応募しました。今回は第63回のコンクールに当たります。県内各校の代表作から、1年生活デザイン科の石井甘菜さん(長洲中出身)、2年生活デザイン科の田中明音さん(宇佐中出身)、3年生活デザイン科の青山うららさん(西部中出身)が、【最優秀(1編)】【優秀(8編)】に続く【優良(16編)】を受賞しました。一昨年は1名入賞、昨年は2名入賞、今年は3名入賞と、本校の入賞者が年次を追って増えたのは喜ばしいことです。また、本校の今回の受賞者は全員、生活デザイン科(家庭科)となりました。田中さんと青山さんは女子卓球部という共通点もあります。部活動で培った集中力を読書にも活かしているのでしょう。
石井さんは、国語の教科書にもよく登場する教材でもある芥川龍之介の短編小説『羅生門』を選びました。高校で扱う小説として、1年次は『羅生門』、2年次は『山月記(中島敦)』、3年次は『こころ(夏目漱石)』が定番です。『羅生門』においては、下人と老婆が登場し、下人の度重なる心情変化が読みどころです。また、「下人の行方は誰も知らない。」という印象的なエンディングフレーズも有名です。「生きるための悪は許される」と、老婆が自己の行為を正当化し、下人も老婆のエゴイズムに感化されるという展開から、石井さんは「善悪とは何か」という題を付け、自己の考えを読書感想文として主張していました。
田中さんは、ホスピス医として人生の最期を迎えつつある患者さんと数多く出会ってきた医者であり、ベストセラー『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』の著者でもある小澤竹俊先生の『もしあと1年で人生が終わるとしたら』を選びました。「私にとって『人生』は選択の連続です。」と書き始めた田中さんは、この本にある「人生は『いつか』ではなく『今』なのだ。」という言葉に、「私たちが何かを先送りにすることなく、今この瞬間を大切に生きることの重要性を教えられた。」と綴っています。高校2年次にこの本に出合った田中さんは、きっと豊かな人生を送ることでしょう。
青山さんは、映画化もされた汐見夏衛著『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』を選びました。映画を観て、小説も読んでみようと思ったそうです。戦時下にタイムスリップした女子高生と特攻隊員の切ない恋を描いた作品ですが、宇佐から特攻隊として出撃し、散っていった若者がいることから、青山さんは身近な出来事と感じました。平和の大切さを痛感した青山さんは、「今なお戦争や紛争が世界中で続き、命を落としている。犠牲者の多くは子どもをはじめとした弱者である。核兵器の恐怖は今もある。本当の意味で世界に平和が訪れることを願ってやまない。」と結んでいます。
さて、依然として高校生の読書量は少なく、全国学校図書館協議会が2024年6月に実施した「第69回学校読書調査」において、5月1か月間に読んだ冊数は、小学生13,8冊、中学生4,1冊、高校生1,7冊でした。また、不読者(0冊)は、小学生8,5%、中学生23,4%、高校生48,3%と「読書離れ」は解消できていません。読書感想文についても、メルカリで販売されていたり、AIに書かせたりと、自分自身での創作か否かが判別しづらい状況もあり、教員や選考担当を悩ませています。その半面、電子書籍での読書量は増えており、読書も新時代に入ったと言えるでしょう。昔も今も「読書が読む人の人生を豊かにする」ことには変わりありません。主体的に読書に親しもうとする児童・生徒であってほしいと願います。文責:国語科主任(古原)