司書の本棚 Vol.03

《 医療にどこまで求めるか~『オカシナ記念病院』 久坂部 羊(著)~》

6月12日(木)に開催する 文化講演会で
講師をお願いしている「久坂部 羊 先生」の小説を紹介します。


研修医の新実一良は離島の医療を学ぶために、「岡品記念病院」に赴任する。

この病院の方針は、治療は患者がやってくれと言うならとことんやるが、患者が求めないなら治療は行わないという「ほどよい医療」だった。

「常にベストを尽くし、できる治療はおこなうべきだ」と今まで教わり、信条にしていた一良は戸惑うばかり。

それでも一良は色々な積極的な医療を行ってはどうかと院内で意見を出し、取り組んでみるが失敗ばかり。患者は岡品記念病院の「ほどよい医療」に満足している。

「助かるなら治療してほしいが、助からないなら無駄な延命治療は拒否、というのは通らない。なぜなら、治療はやってみなければわからないからだ」 そして一度治療を始めたら、患者がどのような状態になっても延命させなければならない。そのようなルールの中、岡品院長は様々な患者と向き合い「ほどよい医療」に行き着いたらしい。

自分は今後医療についてどう考えていくべきなのか。一良の苦悩が続いていく。

これは小説の中の話だが、「ほどよい医療」の時代もいつかやってくるのだろうか。

2025.06.09 司書の本棚 Vol.03

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