全日制 1学期終業式 式辞

皆さんこんにちは。今日で1学期が終わります。皆さんの前で話す際、今、工業を学んでいる生徒の皆さん一人ひとりがいかに貴重な存在であるか、話してきました。皆さんには、日本の社会や大分県民から大きな期待と光が当たっていると思います。そのことを忘れないでほしいと思います。
さて、始業式や入学式で皆さんには2つのお願いをしました。一つ目は「一器一芸」です。自分の得意とする技術や技能を身に付けてくださいということでした。2つ目は「人の役に立つことを考えられる人になってほしい。」ということでした。

まず、一つ目の「一器一芸」ですが、資格取得やものづくりコンテストに向けての取り組み、部活動においては、大工ならではの気合の入った取り組み、表彰式で全校生徒にたくさんの賞状などを渡すことができました。実際の現場もできるだけ見させていただきましたが、やっぱり大工生は凄いな、やるときはやるなと感じました。実際の大会は一発勝負、結果オーライの時もあれば、そうでないこともある。一番大切なのは、途中どのような気持ちを込めて、頑張ったか、努力したかだと私は思います。

 皆さんの先輩のエピソードを紹介します。昔大分工業高校には涼月(りょうげつ)寮があり、昭和34年の3月の卒業までの3年間お世話になった。朝6時の起床に始まる涼月寮は、春日浦校舎の時代の学校敷地の東側、機械科の鍛造実習場の傍らにあり、毘沙門川が目の前を流れている。1、2年生が6時に起床し、廊下、食堂、渡り廊下の雑巾がけ、トイレ清掃、風呂磨きを手分けし、寝ぼけ目をこするひまもなく手際よく進められた。新入寮生の頃は一事が万事要領を得ず、諸先輩方々に教えられた。掃除に終わらず、部屋の整理の仕方、机の上の整頓、挨拶等、多岐に渡った。しかし最たることは勉学における指導であったろう。寮生の成績が先輩は気になり、寮には順送りに残された試験の模範解答等もあり、これを参考に先生方の出題傾向の分析等、先輩達は議論をつくし夜中まで付き合ってくれた。
 下級生の頃は苦しく辛いことも多くあったが、寮生活によって経験し学んだことは、社会に出て大いに役立ったのは私一人ではないと思う。夜9時に寮生の点呼が始まる。寮長が舎監の先生を案内し各部屋を巡回し室長の「異常ありません。」の報告によって寮の1日は終わることになる。青春時代の一時期を過ごさせて戴いた大分工業高校涼月寮そして先生方に感謝の気持ちで一杯です。
これは、昭和34年3月機械科卒業の浜田一男さんの記述です。浜田さんは、後に、電子部品メーカで金型に関わり、当時最先端だった米国で金型を学び、帰国後米国での経験から「精度の高い金型をつくるには、金型構造の標準化が必要」と考え、県内で起業し、国内の金型のJIS規格に大きく貢献しました。その後、浜田さんが手掛けた金型、生産システムは「世界最小」「世界最速」と言われ時代に合った先進的なモノづくりを生み出してきました。

高校時代に充実した学校生活を送る中で作られた人としての軸は大切で、先輩のエピソードの中に学ぶべきところがたくさんあると思います。皆さんも、この夏休み、目標をしっかり持ち過ごしてください。

二つ目の「人の役に立つことを考えられる人になってほしい。」ということですが、以前にも皆さんに紹介しましたが、素晴らしい善行がありました。

①サッカー部1年生の3名生徒さんが、交通事故にあった他校の高校生生徒さんに対し保護者が来るまで付き添ったこと
②近くの脳梗塞後、歩行が大変だった方に対し、本校の生徒さんが、いつも道を譲ってくれたり、声をかけてくれてたり、歩き疲れて、歩道に座っていると家まで送ったという行為
③機械科3年生の生徒さんが、皆さんが使用する下足箱で曲がっている蓋を板金して修理してくれたこと
④建築科1年生の生徒さんが、敷戸駅に降りる通学路の清掃・整美を行ってくれたこと

その後も、

 ⑤近くの小学校の1年生の生徒さんが学校に行きたくないと言って泣いていたところを、本校生徒の生徒さんが誘導して安全な場所まで 一緒に登校してくれた。
 ⑥豊府中高付近で拾ったシューズバックを学校の職員室まで届けてくれた、その時の職員室への入退室や受け渡しの言動など、生徒さんの態度が非常に立派であり、感心した。
 ⑦本校の生徒さんが、多額の現金の入った財布を拾い、警察に届け出た。財布を落として困っている人のことを想像して行動した。
 ⑧土木科の3年生の生徒さんが、校内のアスファルトが剥がれ、道路に穴が開いているところを安全に通行できるよう補修した。

人のことを考えた素晴らしい、カッコいい行動でした。その他にも、家庭の中で、掃除や洗濯などの家事を手伝っている生徒さんの話なども伝え聞きました。親のことを考えた素晴らしい行動だと思います。また、地域の自治会の方とお話しする機会がありましたが、大工の生徒さんが元気よく気持ちの良い挨拶をしてくれ、ありがたいとおっしゃってくれていました。この夏季休業中も、人の役に立つことを考え自分で行動に起こすことを考え生活してみてください。

最後のなりますが、夏休み期間中、中学生向け体験入学、小学生向け体験講座、部活動の合宿や遠征、各種検定・資格試験、ロボット競技、マイコンカーラリー、ロボット相撲の製作活動、大会への出場、工業系同好会活動、上げればきりがないですが、3年生は就職試験に向けてラストスパートとなります。2学期には体育大会、大工祭があります。この夏を超えて心身ともに一回りも二回りも大きくなった姿で2学期を迎えましょう。自転車や水難の事故などに気をつけ充実した夏休みを過ごすことをお願いして式辞といたします。