令和5年度 第73回入学式 式辞

式 辞

 若さあふれる躍動と、生命の息吹を感じさせる、希望に満ちた、この陽春の佳き日、ここに令和5年度大分県立大分東高等学校第73回入学式を、かくも盛大に執り行えますこと、本校にとりまして光栄の極みであり、衷心よりお礼申し上げます。

 さて、只今入学を許可された109名の新入生のみなさん、ご入学おめでとう。この百有余年の歴史と伝統を誇る本校への入学、心より歓迎いたします。

 皆さんは今、向こう三年間の高校生活にさぞや胸を躍らせていることと思います。春四月。良い季節です。皆さんはなぜ入学式を四月に行うのか、不思議に思ったことはないでしょうか。確かに世界的には九月入学が圧倒的に多いようです。一月に入学式をする国もあります。明治の我々の先祖が選んだこの季節は日本においては最高の季節だと思うのです。春三月に別れ、四月に出会う。桜の開花に合わせたのかもしれません。この季節が日本人にとって最もわくわく心浮き立つ季節なのです。高浜虚子の有名な俳句に、「春風(はるかぜ)や闘志抱きて丘に立つ」というのがあります。どうですか。「よし、やってやろう」という今の気持ちを忘れずに、これからの高校三年間のかけがえのない青春の花を是非ここ大分東高校で咲かせてほしい。

 先月行われたWBC日本代表の源田壮亮選手が母校の高校を訪問しました。対応した私にいろいろな話をしてくれました。韓国戦で帰塁の際、小指を骨折。誰もが戦線離脱かと思いました。しかし、ハンディを背負いながらも源田選手は日本のショートとして出場し続けました。その原点は実は高校時代にあったのです。当時の野球部監督に聞いた話です。彼は高校入学時の身長が158cmしかなかったこと。小さいだけでなく目立たない選手であったが、誰よりも根性があり、誰よりも練習熱心であったこと。こんなエピソードがありました。一年生の源田選手が内野ノックを受けている時、イレギュラーバウンドが源田選手の顔面を直撃。前歯が折れたそうです。源田選手はおもむろに欠けた前歯をユニフォームのポケットにしまい、口の中を血まみれにしながら、ノックを受け続けたそうです。侍ジャパンの一員として、日本一の守備職人といわれながら、小指骨折をものともせず、世界と戦い続けた源田壮亮選手の姿と高校時代の壮絶なエピソードが重なります。世界一に輝いた源田選手が私に、「どうしても行きたいところがある」と言ったのでついていってみると、そこは学校の男子トイレでした。「高校時代、ここが僕の掃除区域でした」といって懐かしがる姿に、けっして気取ることのない人間の原点と、素朴な人柄に心が温まる思いがしました。「過去に感謝できる人間は、今を充実して生きている人間」であると思います。過去に感謝できる強い人間になってください。

 まずは「自分を好きになること」、次に「友達を好きになること」。ひいては「学校を好きになること」。「またあした」と言いたくなる「明日が待ち遠しい」学校にしてください。そのために、全教職員あげて、皆さんの良いところを探し、個性を伸ばし輝かせます。将来に渡り、この大分東高校で貴重な高校三年間を過ごしてよかった、そう思えるよう充実した時間を過ごしてください。

 最後になりましたが、保護者の皆様、お子様の高校ご入学、誠におめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。本日より皆様のお子様をお預かりするうえは、ご期待に応えるべく全教職員一丸となって取り組んでまいる所存でございます。どの学校にも負けない教育を推進する決意を今、新たにしているところです。保護者の皆様におかれましては、何卒、本校の教育方針をご理解いただき、ご支援ご協力賜わりますようお願い申し上げ、式辞と致します。

  

  令和五年四月十一日

大分県立大分東高等学校 校長 金田 浩嗣