学校案内
11月4日(火) 2年生SSクラスがProgreSS研修のため種子島・屋久島へ出発しました。
研修出発前、代表生徒が「せっかくの3泊4日の研修。日田に何か持って帰れるよう、4日間頑張りたい」と決意表明をしてくれました。



昼食後に早速始まった研修では、JAXA職員の宇宙輸送技術部門 射場技術開発ユニットの香門麗氏にご講演をいただきました。日本の宇宙開発の最前線について、ISSの生活などについてお話しいただきました。
また、なぜ種子島に発射場があるのか、打ち上げる時に、島内でどのようにロケットを運搬しているかなどお伺いました。生徒たちは熱心に話を聞き、メモを取るなどして今後の探究活動に生かそうとする姿勢がうかがえました。
質疑応答の時間では、生徒から「なぜ衛星の色は金色になっているのか」「使われなくなった衛星はどうなっているのか」などの質問が出ていました。
講演後の生徒の感想としては、
「ロケットの探究について、学びがより深まった。」
「学校の物理や化学とのつながりが分かった。」
などがありました。


その後、マングローブパークに移動し、カヤック体験とマングローブ林観察研修を行いました。河口周辺に広がるマングローブ林を前に、泥と塩分という普段見る植物は異なる環境で生育するメヒルギの受粉から成木までの成長過程についてお話しをうかがいました
1年次の生物基礎で学習した内容を実際に見て感じることができ、普段の学びとの繋がりを感じることができました。講演後、マングローブパークにて「マングローブ林の観察」と「カヤックの体験」を行いました。







11月5日(水) 2日目の研修は、JAXA種子島宇宙センターの見学の後、屋久島への移動という行程でした。
宇宙科学技術館では、宇宙開発における様々な分野について紹介されていました。特に無重力状態を体験できるスペースでは実際に体が浮く感覚に楽しみつつもその原理や仕組みについて学ぼうとする姿が見られました。
施設案内バスツアーでは、展望台からロケット発射場や組み立て棟を眺め、打ち上げが中止されたロケットの機体を目の前に構造について説明を受けました。





発射台の近くまでバス内から観察することができました。ニュース等で見ているものと違い、実際に見るものはとても大きく、これらを作っていくためにどうのように科学技術が発展していったのかなど、科学技術の進歩を感じることができました。打ち上げの最終可否判断や、打ち上げ前後の司令管制を行う総合司令室をガラス越しに見学しました。安全に打ち上げるために、細心の注意をはらって1つ1つ丁寧に作業している様子を見ることができました。


その後、宮之浦港より屋久島へ移動を行いました。



11月6日(木)3日目の研修では、屋久島でのフィールドワークをA・B班に分かれ行いました。
A班はヤクスギランドへ登山を行いました。森林の中を歩きながら、数多くの屋久杉を巡り屋久杉に関する説明を受けました。屋久島の山地に自生する杉のうち樹齢1000年以上のものを「屋久杉」といい、ヤクスギランドには、樹齢2600年超の母子杉や樹齢2500年超の小田杉など、数多くの樹齢1000年を超える「屋久杉」が現在においても自生していました。また、森林の中には、江戸時代に伐採され利用されずに放置された幹や根株が200~300年たった今でも腐ることなく残っていました。「土埋木(どまいぼく)」と称されるこれらの木々は、樹脂を非常に多く含んでいるために腐植しないと説明を受けました。生徒からは、「なぜこの地域の杉は樹脂を多く含んでいるのか」など、多くの質問が出ており、日田杉との違いについて学ぶことができました。また、夏休みに行われた蓼原のフィールドワークで学んだ植生の話を思い出すなど、既習事項と繋げることができました。






B班は、屋久島を一周回りながら、特徴的な地形や植生について観察しました。まず、田代海岸では枕状溶岩の露頭を観察しました。火山島ではない屋久島でこの地域だけに見られる地形で、暗緑色~赤紫色をしており、枕を積み重ねたような堆積構造を間近で観察することができました。次に、永田浜では、砂の形状やウミガメの産卵についての説明をうけました。永田浜の砂は、花崗岩が砕けて細かくなった真砂土で構成されており、種子島の砂浜と比べると、砂粒の大きい砂の違いがはっきりと分かりました。また、永田浜は北太平洋で最もアカウミガメが産卵に訪れる地であり、「なぜ永田浜で産卵をするアカウミガメが多いのか」「産卵しやすい条件があるのか」など積極的に質問する姿が見られました。次に世界自然遺産の一部となっている西部林道の散策をしました。林道沿いは、深い原生林となっており、切り立った斜面に照葉樹林を中心として多様な植生を観察できました。原生林に生息するヤクシカとヤクザルを近くで見ることもできました。事前に学習していたヤクシカの体長が他のシカに比べて小さいことや、ヤクザルの毛の色・長さの特徴を実際に観察し、学びを深めることができていました。最後は、日本の滝百選にも選ばれている大川の滝に行きました。88メートルの断崖から水が勢いよく落ちる光景に圧倒されていました。
天候にも恵まれ、とても充実したフィールドワークとなりました。








フィールドワークを終え、夕方からは屋久杉自然館で屋久杉の歴史とその植生についてお話をうかがいました。屋久杉の森は花崗岩を多く含む土地で栄養源が少なく、対抗する植物が少ないので、杉が長い年月をかけて大きくなっていたことが分かりました。また、屋久杉の保全のため、屋久島の人々と森林の生態系との深い関わりがあってこそだということが伝わってきました。
夕食後は、フィールドワークで分かったことや疑問に思ったことをポスターにまとめました。A班とB班が混ざったチームの中で、お互いの意見を出し合い、さらなる疑問を作り出すことができました。最終日のフィールドワークにて確認を行なって行きます。





11月7日(金) 4日目は昨日と同様に屋久島でのフィールドワークを行いました。
A班は千尋の滝と春田浜海水浴場に行きました。
千尋の滝においては、前日のポスターセッションにおける協議のなかで出た、屋久島の地質、水、植生に関連することの質問が多く出ました。長い年月をかけ、水が花崗岩を削り、滝ができたことがわかりました。
春田浜海水浴場では、岩や植物の違いを観察しました。サンゴの死骸からできた石灰岩を観察し、硬さや形を観察しました。石灰岩がコンクリートのような硬さという気づきから、成分に着目する発言も出ました。また、サンゴ礁が屋久島の地層の動きで海から押し上げられ、石灰岩になったという説明を受けました。植物の違いを観察し、「なぜ、生えている植物が海から山に向けて、きれいに住み分けられているのか」「海水がかかる植物はどのように塩害を防いでいるのか」などの質問が出ました。


B班はヤクスギランドの50分コースを1時間ほどかけてトレッキングしました。
前日にヤクスギランドを訪れたA班の生徒が疑問に思ったことや感じたことを事前に共有し、それを意識しながら植生を観察することができました。
コースの折り返し地点では、樹齢1800年の仏陀杉の観察を行いました。ある角度から見ると仏陀のように見える、という由来で名付けられた仏陀杉には、サクラツツジやヒメシャラなど、12の植物が着生していました。また、歩きながら「くぐり杉」の説明を受けました。くぐり杉は、もともと別の杉が上方で合体してできた杉であり、なぜ合体したのか不思議そうに見つめていました。
生徒たちは、「倒木更新の際、なぜ倒木にコケが生えていることが重要なのか」「ヒメシャラの幹はなぜほかの木よりツルツルしているのか」「くぐり杉は、根元は2つで上方は1本の杉になっているので、養分が過剰になったり、葉の数が多くなったりしているのか」など、歩きながら多くの質問をし、事前の調べ学習の内容をさらに深めることができていました。




A・B班ともに昨日の意見交換の中で知識を深めあいができていたため、昨日よりも科学的に踏み込んだ内容の質問をすることができていました。この4日間を通して五感を使い、体験することで生じた疑問を解決しようと探究する意識が身についたと実感することができました。
生徒たちは、4日間の研修を無事に終え全員そろって帰校できました。
今後の探究活動においても、この4日間の経験を生かしてより一層深い探究活動を行ってまいります。
改めまして、本研修で講演・説明をしていただいた方々、見送っていただいた保護者の皆様誠にありがとうございました。