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学校からのお知らせ

3学期「始業式」が行われました。
2013年01月08日

3 学 期  始 業 式 式 辞

平成25年1月8日(火)

  IMG_0849-1.jpgのサムネール画像新年明けましておめでとうございます。今新しい年を迎え、新たな希望と決意を持って3学期を迎えたことと思います。年の初めに必ず聞くことばの一つに「一年の計は元旦にあり」ということばがあります。これは中国の明の時代の『月令廣義(げつりょうこうぎ)』という書物に出てくることばで、その書物には、「一日の計は晨(あした)にあり、一年の計は元旦にあり、一生の計は少壮にあり」と書かれています。「一日をどのように過ごすかは朝考えなさい。一年の計画は年の初めに立てなさい。一生の目標は今の皆さんのような若い時に確かなものにしなさい。」という意味です。何かを成し遂げるためには、目標、計画、実行力が必要です。年の初めにあたって自分の夢を実現するために、一年の計画を立て充実した一年間を過ごしてもらいたいと思います。

 

さて、今日、皆さんにお話したいと思っているのは、「コミュニケーション能力」についてです。テレビのライブ番組などで、「ツイッター」による視聴者参加型番組が、よく見られますし、年始の挨拶も、年賀状から「SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)」を利用する人が増えています。いろいろなツールを使ってのコミュニケーションが可能になってきています。他人とコミュニケーションをとることが、たやすくなったことは、よいことなのですが、「コミュニケーション能力」という形で、社会は、その質を私たちに求める時代となりました。英語検定や漢字検定と違い、どのような能力を「コミュニケーション能力」というのか、戸惑いを覚える人も多いと思います。しかし、「コミュニケーション能力」ということばは幅広く社会に浸透し、その必要性が学校教育や、就職戦線で声高々に叫ばれているのが、現実です。

 

「コミュニケーション能力」は、日本経団連の調査によると企業の人事担当者が新卒採用にあたってもっとも重視した能力で9年連続トップとなっています。また、経済産業省でも、2006年に「社会人基礎能力」として「コミュニケーション能力」を重要視しています。企業も政府も、「コミュニケーション能力」を社会が若者に対して求めているかがわかります。この背景には、モノづくり中心の経済から、新しいアイディアや知識をベースとする知識基盤社会へ、という産業構造の変化があります。人相手のサービス産業が増え、グローバリズムの時代に、違った価値観をもつ人間同士が意志疎通すなわち「コミュニケーション」をとる必要が増してきたからです。それでは、どうすれば、「コミュニケーション能力」が身につくのか考えてみましょう。

 

 劇作家であり、大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授である平田オリザさんは、

「コミュニケーション能力」について次のように分析しています。これまで、日本人に要求されてきたコミュニケーション能力は、「心をひとつに」とか「一致団結」といったような「価値観を一つにするためのもの」が求められてきました。しかし、価値観やライフスタイルの多様化、グローバル化の影響で、「わかりあう」とか「察し合う」というような日本社会独特のコミュニケーション文化が成り立たなくたったというのです。

 そこで、平田さんは、開き直って、「わかりあえないことから」出発するコミュニケーションを考えたらどうかと提案しています。まず、「わかりあえていない」という前提に立って、その中で、少しでも、共有できる部分を広げていく「やりとり」が「コミュニケーション能力」であると言っています。 

 共有部分を広げるためにどのような方法をとれば、よいのでしょうか。その方法として、「対話すること」・「共感すること」・「社交性を発揮すること」をあげています。

その一つめの「対話すること」は、簡単に言うと、向かい合って話すことです。日本人は向かい合って自分の意見を堂々というのは苦手かもしれません。「以心伝心」ということばがあります。会話をしなくても、心が通じ合うことです。このように、日本社会では、相手はこう考えているのではないかと推測し、その上で、自分の考えや行動を判断するする行動様式がありますから、「対話」は必要なかったのです。グローバル社会では、そのような日本独特の文化は通用しませんから、相手の考えていること、自分の考えていることを「ことば」にし、「対話」という形式をとり、そのやりとりの中で価値観の共通点を見つけ出すのです。

 二つめの「共感すること」は、他人と全く同じ体験はできなくても、その時の思いを共有し、自分と相手の同じ思いの部分を探しだすことです。相手のことを理解するのに大切な感情です。

 三つ目の方法の「社交性を発揮すること」とは、どういうことかと言いますと、人付き合いが上手な人を「社交性がある」というような表現をします。ここでいう「社交性」というのは、自分の気のあった人とだけつきあうというのではなく、人とのつきあいを億劫がらずに積極的にするということです。グローバルな社会において、民族、言語、習慣の違いからさまざまな物事に対する考え持った人たちがいて、その多様性を活かしつつ、一つの社会の中で上手くやっていくために、人と人をつなぐことを「社交性」と捉えればよいでしょう。

 

平田さんは、人との関係をあえて、「わかりあえないことから」としていますが、こういうふうに考えると、人間関係で悩んでいる人も、少し気持ちが楽になるかもしれません。もう少し、広い視野でみると、利害が複雑絡み合って混沌としている日本の政治・経済も、たくさんの人が命を落としている世界の紛争地域のことも、冷静に見つめることができるでしょう。しかし、「わかりあえないこと」はあくまでもスタート地点です。対人関係において、これまでのような、「何も言わなくてもわかってくれるだろう」「相手の出方を待つ」というような消極的または、受け身ではいけないのです。「コミュニケーション能力」は、「対話すること」「共感すること」「社交性を発揮すること」を念頭におき、積極的に自分以外の人・集団に関わって行くことで、高められていくのだと思います。

 

最後に、3学期終業式では、「皆さんは、無限の可能性がある存在です。夢と希望を持って自己を鍛えて下さい。」とお願いしました。今年度の締めくくりの学期として、皆さん方一人一人の夢実現の仕上げをお願いして式辞といたします。しっかり頑張って下さい。

 

 

参考書籍 「わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か」

      著者 平田オリザ 講談社現代新書