全日
普通科
全日
HOME > 校長室 > 第69回卒業式 校長式辞

校長室

第69回卒業式 校長式辞
2017年03月03日

3月1日に行われた卒業式の校長式辞の全文を掲載します。

 

( 式 辞 )

 

 梅の香が、冬の空気を包み込むかのように漂いはじめ、ここ鶴見の丘にも、ようやく、確かな春の訪れを感じる季節となりました。 

春は命を吹き込む季節であると同時に、春風は、新たな旅立ちを迎える若者を祝福するかのように優しく吹いています。

 本日ここに、多くのご来賓と保護者の方々のご臨席を賜り、大分県立別府鶴見丘高等学校第六十九回卒業証書授与式を挙行できますことを衷心より感謝申し上げます。

 ただいま、卒業証書を授与しました二百三十四名のみなさん、卒業おめでとう。三年間の高校生活を無事に、そして、かけがえのない青春を充実させるべく本校の校訓「質実剛健」のもと、研鑽の日々を積み重ね、本日、立派に卒業の日を迎えたことに心から祝福を贈ります。

 そして、ここに一編の漢詩を贈りたいと思います。

「一貫、唯唯(いい)の諾」

「従来、鉄石(てっせき)の肝」

「貧居(ひんきょ)、傑士(けっし)を生み」

「勲業(くんぎょう)多難に顕(あら)わる」

「雪に耐え梅花麗しく」

「霜を経て楓葉(ふうよう)丹(あか)し」

「如(も)し、能(よ)く、天意を識(し)らば、」

「豈(あに)敢(あ)えて、自ら安きを謀(はか)らむや」

引き受けたこと、心に誓ったことは、どこまでも、ただ、ひたむきに

やり通さなければならない。

鉄の如く、石の如く守ってきた決意は、いつまでも、それを変えてはならない。

貧しい生活してきた人の中から優れた人物が生まれ、

素晴らしい事業というものは、多くの困難を経て成し遂げられる。

梅の花は雪に耐えて麗しく咲き、楓の葉は霜を経て赤く紅葉する。

もし、このことが理解できたのなら、楽な生き方を選ぶことなど、

どうして出来ようか。

 

「雪に耐えて梅花麗し」

 

これは、幕末の志士であり近代日本を作った西郷隆盛が、甥の海外留学に際し贈った言葉です。そして、これは、卒業生の皆さんの、学年スローガンとして使われた言葉でもあります。私もこの言葉を皆さんに贈り、その努力をたたえたいと思います。

 卒業生諸君は、この言葉の意味を共有し、それぞれの苦しみや辛さを乗り越え、楽な生き方を選ばず自分が志す理想の生き方を模索すべく、自分を磨き、血のにじむような努力をしてきたのだろうと思います。

 

 多くの友人たちと机を並べながら、喜び、苦しみ、悩み、楽しみ、時には涙し、そしてみんなで笑い、希望を語り合った、思い出が鮮やかによみがえってくることでしょう。それは、時に切なく、時に、ほろ苦く、しかし、甘く懐かしいものかもしれません。

 この青春の日々は、皆さんのこれからの長い人生の中で、かけがえのないワンシーンとして、よみがえってくるものと思います。

 きびしい勉強や部活動に汗を流し、クラスマッチ、体育大会、伝統の鍛錬遠足そして思い出深い修学旅行など、友と語らい、さまざまな人たちと出会い、多くの学びと経験を積んだ、この三年間の高校生活が、みなさんの中で、血となり、肉となって息づいています。この三年間での成長は、単に肉体的なもののみならず精神的にも充実が図られ、全人的なものとして、皆さんの心のアルバムにとどめられ、これからは、それをめくるように、皆さんの人生に生かされていくことでしょう。

 これから皆さんが生きていく社会の有り様を、次のように予想した人がいました。「国際化の進展を受けて、人々の暮らしが一層豊かで、便利になる一方、市場主義が生活のあらゆる場面に厳しい競争や対立を持ち込んでくる。この自由競争の激化は私たちにとって大きな試練となるであろう。しかし、それは一人一人自立した個人として、二十一世紀を生き抜く活力と世界に向かって開かれた成熟社会を築くために避けて通ることのできない過程である」と。まさに、今、激動の時代、変革の時代を目の当たりにしています。国内では東日本大震災からの復興や原発事故での放射能汚染、少子高齢化による社会構造の変化、国外に目を移せば近隣諸国との外交問題、世界各地での内戦やテロなどの国際情勢も複雑化しています。

 地球規模の環境問題も一刻の猶予もならない問題です。次の世代に積み残した課題は、多くかつ深刻で、将来への明るい希望の光を、先の見えない不安が覆い隠しているかのようです。しかし、歴史に学べば現代の風潮が永遠に続く事がないことも事実です。閉塞感と変革の時代であったといわれる江戸時代の末期、幕末に、吉田松陰は多くの若者たちに「夢なき者に成功なし」と説いています。そして、その変革の時代に現れた若者達はその出自や環境に甘んじることなく、明確な意思と志を持ち、その目標達成のために、いかなる努力も厭わない人間となり、それまでの常識を覆す発想と行動力を生みだしました。そしてそれらは、いつ訪れるか分からないチャンスをも、ものする運さえ招くことになりました。

 いまこそ、皆さんはどんな境遇であろうとも、「夢」・「志」を忘れないで欲しいと思います。「志」あるものが世界に羽ばたいた時代が、かつてあったように、今、その時代が君たちの目の前にあり、その未来は君たちに託され、君たちによってその未来は開かれていくのです。

 先に挙げた西郷隆盛は「敬天愛人」を座右の銘とし、それを実現するためには、「身を修するに克己を以て終始せよ」としています。「人は果たすべく何かを持って生まれ、社会において果たすべく使命感を自覚し、自我に打ち勝ち、世のため人のためになりたいという気持ちを持ち続けることが大切である」と教えています。

 志を抱き、世の中の発展に貢献し、理想とする社会を実現するためには、西郷が言うように、確固たる意思を持ちつつ、鶴見丘高校での学びを礎として、これからも、必要な能力や教養を身につけ、人と人との出会いの中で、誠実さ、寛容さを磨き、品位ある人格と思想を形成することを願っています。

 そして、それらが、グローバル社会を生きる皆さんの、ゆるぎないアイデンティティとなって確立し、平和で調和のとれた世界の実現に貢献する人物となることを期待しています。

 何度もくじけそうになるでしょう。しかし、強く、しなやかに、タフに自分の人生を生き抜いてください。ゆるぎないアイデンティティと勇気を持って一歩を踏み出せば、その人だけが、見ることのできる景色が、きっとあるはずです。

 

 ここで保護者の皆様に一言ご挨拶申し上げます。長きにわたり本校の教育にご理解とご協力を賜り、心より感謝申し上げます。まだ幼さをとどめていた三年前を思い出して、今の晴れやかな顔と見比べ、確かな成長を感じられることでしょう。啐啄の機をもって、お子さまの成長を後押ししていただき、お子様と共に多くの苦労を乗り越えていただいたことに深く敬意を表します。本当にありがとうございました。

 さて、高校を卒業して新たな人生という旅に出るみなさんにとって、これから母校は自分の原点を再見する、かけがえのない場所となるはずです。そのような母校、鶴見丘高校を、支えていただいた地域の方々をはじめ、多くの同窓生の皆様の熱い思いに、改めて深く感謝するとともに、これからは同窓生の一員として、母校、並びに地域をしっかり支えてもらいたいと思います。

 これから、どう生きるかによって、過去の価値は、新たに塗り替えられます。つまり、これからの生き方が、これまでの人生の価値を決めます。清廉なる「志」を持って未来を切り開いて欲しいと思います。そして、 いつでも「学力と人間性を兼ね備えたタフな鶴高生」であることを願っています。

 力強い一歩を踏み出す二百三十四名の未来に幸多かれ、と心から祈りつつ、式辞と致します。

 

平成二十九年 三月 一日

大分県立別府鶴見丘高等学校

校長 酒井 達彦